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コロナ禍で挑戦を続けるアイスタイルのDX推進

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第22期(2021年6月期)は、緊急事態宣言が2度発令されるなど、年間を通じて新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けました。リモートワークによるオンライン会議やコンサートのライブ配信の普及など、日常生活においてもオンライン化が進む中、当社事業においてはEC事業の伸長に加え、様々なサービスで新たなDX(*1)推進に挑戦してきました。その成果や今後の可能性について、小売領域のDX推進とブランド向けソリューションを統括する坂井、新規事業「@cosme認定ビューティーパートナー」の立ち上げ責任者の李、接客のエキスパートとしてオンライン接客を担当する一倉に話を聞きました。

*1 DX(デジタルトランスフォーメーション):企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること

より良いサービス提供を模索したDX推進

担当領域でどんな課題に対してどのようなDX推進に取り組みましたか?

坂井 第21期(2020年6月期)に担当していた旗艦店「@cosme TOKYO」というリアル店舗の接点で、ビーコンや共通台帳システムなどを使った店頭におけるお客様の行動の可視化や価値化を進めながら、実際にお客様に来店いただくことが難しい状況を受けて、KDDI(株)様と共同でXRの技術を使った仮想空間上の店舗「@cosme TOKYO-virtual store- (*2)」を立ち上げた他、当店の最大の強みである従業員の接客を進化させるべく、オンラインカウンセリング、ライブコマース、スタッフによる記事や商品紹介の発信など、お客様への新たな購買体験・価値のご提供に取り組んでいます。

*2 @cosme TOKYO-virtual store-:バーチャル空間上の「@cosme TOKYO」にスマートフォンでアクセスすることで、店内を散策しながらいつでも商品を購入する体験ができるサービス。詳細は2021年1月6日発表のプレスリリース参照https://www.istyle.co.jp/news/press/2021/01/0106.html

 

 世の中の状況が一変し、生活者が店頭で相談する機会が減り、化粧品のEC化率が高まったことで、インフルエンサーやYoutuberなど、いわゆる"個"を中心とした販売が盛り上がりを見せています。ただその一方で、安全性が大事な化粧品において、発信される情報が信頼できるものかどうかがわからなくなっている側面もあります。そこで、情報発信する個人に化粧品に関する知識のお墨付きを与えて個人と生活者をうまくつなげられるよう、「@cosme認定ビューティーパートナー」という資格制度のようなプログラムを作ってその普及とネットワーキング活動を行っています。

一倉 店頭で長く接客に携わってきましたが、緊急事態宣言下で店舗が休業となり、ECでお客様のために何かできないかということで急遽作った「化粧品の使い方動画」がお客様に好評だったことから、オンラインでの可能性を感じ、社内のいろんな部署と協力しながらオンラインでのカウンセリングやチャット相談、体験会などを実施してきました。また、オンラインでお客様と1対1でお買い物のお手伝いをするお買い物コンシェルジュというサービスも始めました。

 

現場ではコロナ禍における変化としてどのようなことを感じましたか?

一倉 オンライン会議やオンライン授業などの一般化の影響なのか、お客様のオンライン慣れというものをすごく感じます。オンラインカウンセリングも以前は緊張してかしこまっていた感じでしたが、今は移動中や隙間時間に気軽にご利用いただくことも増えていますね。世の中ほんとに変わったと思います。

坂井 リアルでできることはオンラインでも当たり前にできるという感覚になったのかなということも思います。これまで長く提供してきているECだけではなく、バーチャル店舗にも挑戦したのは、お店で商品を選ぶ楽しさをオンラインで提供できないかという発想が基になっています。

 あと、生活者がオンラインで情報発信することのハードルが驚くほど下がっていると感じており、それだけでなくオンラインでの伝わりやすい話し方や見せ方など、レベルの高い人も増えているように思います。その影響なのか、「@cosme認定ビューティーパートナー」のお申し込みも順調に増えています。

 

DXを推進する上で何が重要と思いますか?

坂井 DXはあくまでもIT化ではなくデジタル"トランスフォーメーション"なので、今までの考え方から脱却して、物販だけの小売事業ではないビジネスモデルへの変革を目指しており、そのプロセスが現状の取り組みですので、新たな価値を生み出すという意識を持って、とにかくいろいろチャレンジすること。技術の進歩でできることが増えており、何が生活者に喜んでいただけるのか正解のない状況で、"生活者中心の市場創造"という当社のビジョンを体現すべく、失敗を教訓にしながら前を向いて試行錯誤を続けています。

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一倉 DX・オンラインであったとしても、生活者であるお客様一人一人に寄り添って考えることができるかが大事だと思っています。インターネットというツールを介していますが、接客の基本は変わらないので、お客様の期待にお応えするには、お肌や化粧品に関するお悩みなどお客様のありのままを話していただけるような質問力や雰囲気づくり、お客様に笑顔になっていただいて信頼関係を築けるような人間力が大事だと思っています。また、ブランド横断で接客できることが私たちの一番の強みなので、商品知識を深めるための勉強ももちろん欠かせません。

 オンラインで売り上げを伸ばしているYoutuberやインフルエンサーの特長として、単に多く情報発信するということではなく、生活者が自分のコンテンツに何を求めて見に来てくれているか、どんな情報を求められているかを想像して、それにきちんと応えていることが挙げられます。たとえばリップ一つを紹介するにおいても単に塗って見せるだけではなく、塗った直後と数時間後の比較を見せたり、ご飯を食べた後の色の変化を見せたりとか。お二人の話にも通じますが、何がお客様のニーズに合うのかを試行錯誤の上で把握し、実践することが大事だと思います。

化粧品業界に求められること

今後、化粧品業界は生活者にどういうことが求められると思いますか?

坂井 2020年は、@cosmeのクチコミ数が東日本大震災のあった2011年に次ぐ多さでした。店頭で接客を受けづらい状況で、安心・安全を求める化粧品だからこそ信頼できる情報が欲しいというニーズを生活者自身が感じて、他の人のために自分もクチコミを投稿しようとなったのではないかと思います。また、化粧品を買うことに慎重になって衝動買いが減ってきているようにも見受けられます。パーソナライズされた情報やサンプルのご提供といった、自分に合った安心・安全を感じられるサービスが大事だと思います。

一倉 サンプルを購入してまで試すという生活者も増えていますよね。ただその時に、化粧品をぜひ正しく使っていただきたいと常々思っています。誤った使い方で自分に合わないと思ってしまうケースもあるでしょうし、真にお客様のことを考えるなら、「購入いただいてからがスタート」という意識で販売側はお客様に向き合わないといけないと思っています。

坂井 まさにそうですね。化粧品販売においてはモノを売って終わりではなく、「エデュケーション(お客様の肌を共に育む)」という側面が重要で、商品の使い方や他の商品との併せ使いや色使いまで理解していただくことでその責任が果たせるのではないでしょうか。そこからお客様との信頼関係が構築できていくんだと思います。

アイスタイルグループだからこそのDX推進

アイスタイルグループだから提供できる価値とは何だと思いますか?

坂井 当社グループは、メディア、EC、店舗を運営しています。そして、店頭にはブランド横断でカウンセリングのできるプロフェッショナルスタッフが多く在籍しています。また、ゼロから育てられる美容人財の教育プログラム、リアル店舗やECでの販路を活かし、ヒト(美容人財)・モノ(EC・店舗の取扱い商品)・コト(@cosmeのコンテンツや@cosmeTOKYOなど)の三位一体によって、唯一無二の体験をお客様、ブランド、小売店などBeautyに関わる全ての方々へ価値を提供できると思っています。

一倉 好きな時に、好きな買い方でお買い物できるということです。たとえば実物を見たい時はお店で買う、使い方がわからなくなればオンラインカウンセリングで聞く、クチコミを読んで迷ったらお買い物コンシェルジュを利用する。それがしかもラグジュアリーからプチプラまでブランド横断でできる。言葉にすれば簡単ですが、これらは@cosmeにしかない提供価値だと思います。 また、私自身の例ですが、日によって、店舗に出ずにオンラインで1日接客したり、店頭で接客したり、新しい働き方も実現しています。これが広まれば働く側への新しい価値提供にもなると思います。

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 他にも今まで特に地方では、化粧品専門店が地域密着でお客様との信頼関係を築きながら販売してきましたが、人口減少や後継者不足に加えコロナ禍で化粧品専門店自体が減っている。DXによってアイスタイルがこの機能を担えるのではないかと思います。

坂井 あと、当社グループの全店舗およびECどこで購入いただいてもそのデータは共通化されているので、たとえば普段とは別の@cosme STOREでカウンセリングを受けていただく際にも、過去の購入データがブランド横断ですぐにわかるようになっている。当たり前のようでこれは@cosmeならではの仕組み。接客する側はもちろん、お客様にとっても便利にお使いいただけるので、これも一つの価値だと思います。

 

今後に向けての抱負をお願いします

 この数年、いろんな業界で個が活躍の幅を広げています。アイスタイルグループでは、中国向けのライブコマースやYoutuberとのコラボ事業もやっていますので、「@cosme認定ビューティーパートナー」で人気が出た人がそれらのサービスでも活躍するような道筋を作るなど、ビューティーの業界でも個がもっと活躍できる土壌を作れたらと思っています。

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一倉 オンラインカウンセリングやコンシェルジュをもっとブラッシュアップしたい。たとえばテーマ特化型のものやちょっとユニークなものなどにも挑戦するとか。あと、@cosmeでオンラインカウンセリングが受けられることはまだまだ知られていないので、認知度を上げてサービスの提供機会を増やしていきたいと考えています。

坂井 量販店や百貨店などの小売りがECを強化したり、競合となるサービスの成長や新規参入があったり、メーカーが直接消費者とつながる方法を強化するなど、当社グループを取り巻く環境は目まぐるしく変化し、競争も激化しています。その中で我々がどうやって成長していくか。世の中の変化を受けてお客様の行動やニーズも変わっていく中で、それにお応えできるようなスピード感で我々自身も変化しながら、お客様に選んでいただけるようなサービス・ビジネスモデルの構築を目指していきたいと思います。

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