AI時代に問われるアイスタイルの真価

AIの進化が加速する中、生活者の行動や化粧品業界はどう変わり、アイスタイルはどう成長を続けるのか。モデレーターを務める吉松が、現場の最前線で化粧品ブランドと伴走する天野、UXとコミュニティ設計を担う作間と共に、@cosme(アットコスメ)が持つ「模倣困難な強み」と、その先にある未来を語ります。
【AI時代に「データの解像度」で圧倒する@cosme】
吉松:株主や投資家の皆さんから、「AIが普及したら@cosme はどうなるのか」「強い会社であり続けられるのか」という疑問をいただくことがあります。私はむしろ、AIの進化によって、アイスタイルの可能性はさらに広がっていると感じています。今日は、天野さん、作間さんと一緒に、AI時代に@cosmeの価値がどう変わるのか、アイスタイルがどこへ向かうのかを話していきたいと思います。まずは、AI時代におけるデータの価値から考えていきましょう。
天野:大前提として、アイスタイルが保有するデータをユーザーや化粧品ブランドが本当に活用できる状態で提供できるか、AIを我々が使いこなせるかが分岐点になります。世の中で言われる「ユーザーデータ」の多くはPOSデータ(購買結果データ)ですが、それは結果のモニタリングに過ぎず、それだけで顧客行動の予測には限界があります。@cosmeが持つデータの価値は、その手前の「購買に至るプロセス」であり、その唯一無二のデータをAIという新しい強力なテクノロジーを用いてどう生かすかが、今まさに問われているところです。
吉松:一般的に「お客様データ」は、自社が持つ顧客データや、購入履歴など限られた範囲のものです。一方@cosmeが持っているのは、購入する前にユーザーがどの商品と迷い、何を比較したのかという「検討データ」、購入した後に、ほかの商品と比較してどう感じたのかという「評価データ」です。さらに、自社の商品を買ったユーザーだけでなく、競合他社の商品を選んだユーザーのデータまで含まれています。
この「データの解像度」の圧倒的な高さは、競合他社が何十年かけても簡単には持ち得ない、@cosmeならではの価値であり、AI時代にこそ大きな意味を持ちます。
作間:体験設計やコミュニティの観点からも全く同じです。AIや、その先にあるAGI(汎用人工知能)がどれだけ進化しても、そのAIを動かすための燃料が必要です。私たちは創業以来、単にデータを集めてきたのではなく、ユーザーが本音を語れるカルチャーやコミュニティを大事に守ってきました。ユーザーが「本音を共有したい」「ここにデータを溜めたい」と思えるような心地よい体験設計をコアとして磨き続ける限り、@cosmeにしか集まらないデータの独自性はさらに際立っていくはずです。
吉松:昨年4月にデータコンサルティングを立ち上げたことで、私たちのデータの価値が具体的な数字や成果として見え始めてきました。化粧品ブランドをはじめ、様々なクライアントとの取り組みの中で、実際にどのような変化が起きているのか、現場の事例を通じて見ていきたいと思います。
天野:日本を代表する大手メーカーから、新進気鋭のミドル・スタートアップブランドまで、数多くの戦略支援プロジェクトをご一緒させていただき、初年度から十分な手応えを感じています。
これまでは広告プロモーションなどマーケティング川下のご支援が中心でしたが、今ではブランドの中期計画策定や投資判断、新商品開発(川上領域)にまで、@cosmeの実態データを用いて深く伴走する体制が確立しています。
特に大きな進捗は、複数のブランドを展開されるクライアントにおいて、ブランドごとの個別最適化だけでは見えにくかった「経営・組織全体の構造的な顧客課題」を当社のデータから浮き彫りにし、メーカーの経営陣の皆様と直接議論するレベルにまで提供価値が昇華している点です。ビューティに携わる企業を総合支援するエコシステムが、すでに形になり始めています。
【検索のAI化で「クチコミの信頼性」はさらに価値化する】
吉松:次によく聞かれるのが、「AIが検索の入り口になると、Webサイトへのアクセスが減るのではないか」という懸念です。入り口は変わっても、本質的に重要なのは「ユーザーが最後に何を確かめたいのか」です。AI時代に、クチコミや実体験の価値がどのように変わっていくのか。ここをさらに話していきたいと思います。
天野:@cosmeのコアの価値は変わりません。AIはハルシネーション(もっともらしい不正確な情報の生成)という課題があり、バズを狙う他のプラットフォームでは、AIを使った虚偽クチコミが生成されやすい構造があります。
一方@cosmeはバズ目的のアルゴリズムではないため、ハルシネーションが極めて起きにくく、情報のセーフティネットとして他社より圧倒的に高い信頼性を担保できています。
作間:複数のブランドをフラットに比較して「本当かどうか確かめたい」という生活者の目的自体は変わりません。その根底には「コスメ選びで絶対に失敗したくない」という強い心理があるので、@cosmeの本質的な価値は何ら変わらないですね。
吉松:確かに、検索経由の流入は減る可能性がありますが、ユーザーが@cosmeに来る目的そのものは変わりません。ユーザーが確かめたいのは、「この情報は本当か」「実際に使った人はどう感じたのか」です。むしろ、AIが普及するほど、情報の正しさを確かめる「本物の実体験データ」が必要になります。その最大の供給元になり得るのが、ネット上の行動だけでなく、リアル店舗での購入や体験まで含めた、多様なデータが集まる@cosmeです。情報への入り口が変わったとしても、私たちのデータが求められ続ける構造は揺るがないと考えています。
作間:AGI(汎用人工知能)の時代になり、AIが単なる「検索・相談ツール」から、ユーザーの生活に寄り添う「伴走者」へと進化する時こそ、意思決定の確信を得るために「誰が言ったか」(属性・背景)という実体験の文脈が極めて重要ですね。今のSNSは顔の見えるインフルエンサーが主役ですが、広告・案件目的の投稿が増え、ユーザーも企業もリスクを感じ始めています。さらに最近では、周囲に見られることを極度に気にするがために、SNSでの自然発生的なクチコミ投稿は減少傾向にあります。
一方、@cosmeは非公開で個人情報が守られる安心感があり、その上で誰かの役に立ちたいという純粋な貢献欲求から、インセンティブなしで「本音のクチコミ」が集まります。この「生活者が本音で語れるカルチャー」を創業から守り続けてきたことが、我々の最大の防御壁であり強みです。
【二極化する市場と、非合理への揺り戻し】
吉松:ここからは時間軸を延ばし、5年後、10年後の化粧品業界について考えてみたいと思います。
AIの進化によって、市場の構造やブランドのあり方はどのように変わっていくのか。その中で、アイスタイルがどのような役割を果たしていくのかも、見えてくるのではないかと思います。
天野:業界は大手ブランドと、少人数で正解を作っていける尖ったスタートアップへと極端に二極化し、中間層のブランドが苦しくなっていく可能性が高いと見ています。その中で、メーカー側が自社の顧客管理だけでは実現できないような「ユーザーとの緩やかなつながりのコミュニティ」を提供し、ブランドと生活者を結び続けるプラットフォームという我々の役割は、ますます大きくなります。
作間:AI化が進むと、最適な答えに最短で導かれ、あらゆるプロセスが合理的になりますが、ビューティの本質には敢えて自身で選択肢を増やし迷う楽しさ、すなわち「非合理を愛するカルチャー」が存在します。コスメは単なる日用品ではなく、嗜好品という側面があります。合理的なAIの世界が一巡した時、必ずこの非合理性への揺り戻しが起きる。その時、カルチャーの結晶である@cosmeのコミュニティの価値が再び重なり合い、新しい美の文化が生まれていくと考えています。
吉松:エイジングケアや美容投資は、少子高齢化が進む日本でも熱量が高まり続ける極めて稀有な成長マーケット。AIによって効率化が進むからこそ、「ブランドが価値観に共感するユーザーとどう出会うのか」が、今まで以上に重要になります。私たちは、異業種のプレイヤーも巻き込みながら、昨年10月に開催した「Tokyo Beauty Week」をはじめ、業界全体を盛り上げる新たな場をつくっていきたいと考えています。
単に自社の事業を成長させるだけでなく、ビューティ業界そのものを活性化していく。その牽引役を目指しています。
【「店舗(リアル)」と「EC(ネット)」の進化】
吉松:アイスタイルのもう一つの大きな強みとなるのがリアル店舗です。@cosmeは、単なるWebのサービスではなく、ユーザーとブランドが実際に出会う、強い店舗基盤を持っています。AI時代に店舗がどのような役割を担い、どのように進化していくのか話を深めていきたいと思います。
天野:店舗スタッフの在り方も変わると思います。AIで知識が蓄積された状態でお客様が来店する時代、従来の説明・接客は通用しません。そこで、お客様・美容部員・そして双方のAIを交えた「4人で相談して納得のいくコスメを選ぶ」という店舗体験が作れたら、それは新しい驚きや気づきを与える店舗価値になります。体験をシンプルに設計し、そこにクチコミデータを調和させていく。これはSNSだけ、あるいは店舗だけを持つ競合には真似できません。リアル店舗を中心に本音のクチコミが循環するタッチポイントを持っているのは、我々アイスタイルだけなんです。
吉松:まさに、商品を選ぶまでの体験プロセスそのものが、ある種のアトラクションとなり、来店価値になるということですね。そして、この「体験のプロセス」がネットやECのあり方を考える上でも重要になります。次は、これをECにどうつなげていくのかを考えましょう。
作間:コスメに特化したバーティカルECの単独運営は、配送スピードや巨大なプラットフォーマーとの競争などと向き合わないといけない。しかし、今のメーカーにとって、自社でECサイトを構築・運営し続けることもまた、膨大なコストとリスクの塊になっていることは間違いないです。
吉松:そこで私たちは、@cosmeのECを自社仕入れ・販売の場から、ユーザーとブランドを広くつなぐ基盤へ進化させたいと考えています。例えば@cosme IDを起点に、ブランド公式ECの商品もシームレスに購入でき、共通ポイントも使える。そんな世界をつくれないかと考えています。これは利便性を高めるだけでなく、自社ECの運営負担に悩むブランドの支援にもなり、社販や福利厚生といったクローズド市場へも拡大できます。ECを単独の販売事業ではなく、BtoB支援機能と一体で広げる点にアイスタイルならではの大きな成長余地があると考えています。
また、今後スマホのOSレベルでAIが組み込まれるようになれば、「私に合うもので、一番安く、早く届くものを注文しておいて」と伝えるだけで購買が自動化されます。そうなると、単に商品を並べて売るだけの「利便性追求型EC」は巨大プラットフォーマーに価格やスピードで対抗することが難しくなり、その存在意義を失うリスクすらあります。
しかし、どれだけAIが自動化しても、「ユーザーがブランドと出会い、体験を通じて好きになっていく」という感情を伴うプロセスまでは簡単には代替できません。ネットとリアルをつなぎ、ユーザーがブランドを深く理解し、本気で好きになっていくまでのプロセスをトータルで設計できること。これこそが、AI時代におけるアイスタイルの勝ち筋だと考えています。
【最後に】
吉松:インターネット、SNS、そしてAI。情報への入り口が変わるたびに、「@cosmeは大丈夫か」と言われてきました。しかし、私たちは、その変化をすべて成長のチャンスに変えてきました。それができたのは、私たちが「生活者中心」「本音で語れる場」という、模倣困難な思想とカルチャーを、創業以来守り続けてきたからです。
AI時代は、@cosmeが持つ唯一無二の実体験データと、ユーザーがブランドと出会い、好きになっていくまでの体験プロセスの価値が、最も際立つ時代です。私たちはこの変化を追い風に、アイスタイルをさらに大きく成長させていきます。
これからのアイスタイルのさらなる飛躍と挑戦に、ぜひご期待ください。