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CEO&CFOインタビュー ~中期経営計画との乖離と中長期での成長について~

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当社は、2016年8月に2020年を最終年度とした4ヵ年の中期経営計画「Road to 2020」を発表いたしました。

中期経営計画を公表してから3年経過いたしましたが、今回現状を改めて精査し、中期経営計画を延長することといたしました。また、2020年6月期(以下、FY20)の計画は売上高390億円、営業損失12.4億円を見込んでおります。今回、中期経営計画の延長やFY20が赤字計画となった要因や背景、今後の戦略等について、CEOの吉松とCFOの菅原からご説明させていただきます。

赤字計画の要因と中期経営計画の延長について

吉松 FY20が赤字計画となった一番大きな要因は、広告に次ぐ第2の収益の柱と位置付けている「ブランドオフィシャル」のリリースが1年遅れたことです。そのため売上を計上するタイミングにもずれが生じました。それに加え、新たなチャレンジへの投資が重なることも影響しています。

菅原 今回非常に大きな投資を決断しました。JR原宿駅の目の前に、アイスタイルとしては初の大型路面店となる「@cosme TOKYO」を出店することです。

吉松 「@cosme TOKYO」の出店は、アイスタイルが進めてきた、メディアや店舗、ECを連携し、プラットフォームとしてユーザーとブランドをつないでいく戦略を大きく推し進めていく投資のひとつになります。さきほどお話したように「ブランドオフィシャル」の計画の遅れと、「@cosme TOKYO」の投資が重なったことにより、FY20が赤字の計画となったことは、株主の皆さまの期待に応えることができず、大変申し訳なく感じています。

菅原 2021年6月期(以下、FY21)では「ブランドオフィシャル」の導入拡大と一連の戦略的投資の黒字化を目指しており、連結でも黒字を見込んでいます。当初の予定に比べ投資期間が延びることにより中期経営計画を延長することとなりますが、吉松がお伝えしたようにユーザーとブランドをつないでいくという戦略に変更はありません。

吉松 役員一同、そして社員も含め、この戦略推進には確信ともいえる自信をもっています。「@cosme TOKYO」などの戦略的投資についての詳細は後ほどご説明させていただくとして、まずは「ブランドオフィシャル」の進捗状況についてお伝えしたいと思います。

前例のないサービス、それがブランドオフィシャル。社外取締役からの反応で自信が確信に

吉松 「ブランドオフィシャル」は、化粧品ブランドに提供しているSaaS※型のマーケティング支援サービスです。@cosmeユーザーとブランドとの関係を可視化できることに加え、それをもとにブランドがユーザーとより適切なコミュニケーションを行うことができ、マーケティング戦略の意思決定にも役立てることが可能です。遅れた要因は、これまでユーザー向けのサービス開発を行ってきましたが、「ブランドオフィシャル」のようなSaaSの仕組みづくりに慣れておらず、きちんとした社内体制が構築できていなかったことです。また、社員に対して、「ブランドオフィシャル」によって実現したい世界をきちんと浸透させることにも時間を要しました。開発の進むべき方向にずれが生じ、軌道修正をはかったことによりリリースが遅延しました。現在では、「ブランドオフィシャル」のサービス自体は既にリリースを果たし、インナーコミュニケーションにもしっかり取り組んでいるため、今後の開発が大きく遅れる心配はないと考えています。

※SaaS...Software as a Serviceの略。クラウドで提供されるソフトウェアサービス

菅原 リリース後もクライアントへの営業活動に時間を要しました。それにより、「ブランドオフィシャル」をはじめとしたソフトウェア投資の償却費用の発生と、「ブランドオフィシャル」の売上が本格的に発生するタイミングにずれが生じたということも、FY20が赤字計画となったことに大きく影響しています。

吉松 FY20の赤字計画については、社外取締役・監査役とも議論を交わしました。本当にさまざまな意見をいただきましたが、共通していることがひとつだけありました。それは『ブランドオフィシャルをやりきるべき』ということです。金融やIT、小売、会計士など、バックグラウンドが異なる社外役員の方々全員が「ブランドオフィシャル」に理解を示すとともに、大きな可能性を感じてくれたのです。私はかねてより、「ブランドオフィシャル」に対しては自信を持っていましたが、これにより、私の中で「自信」が「確信」へと変わりました。

菅原 アイスタイルの社員も、ユーザーやクライアントに対して、これまで以上に大きな価値を提供できると、よりモチベーション高く業務を進めています。FY20が赤字計画となったため、危機意識や今が正念場だという気持ちを感じているとは思いますが、社員には、決して後ろ向きにならずに会社と自分の可能性を信じて、クライアントや業界のさまざまな課題と向き合いながら業務に取り組んでほしいと考えています。

吉松 今、アイスタイルが置かれている状況は、業績面では辛い局面であるというのは事実です。しかしながら、個人的には1~2年前の方が苦しかったです。当時は、「ブランドオフィシャル」の目指すべき方向性について、コミュニケーションの不足から社員個人個人の認識や理解度にばらつきがありました。「ブランドオフィシャル」はこれまでにないサービスであったため、全員の共通理解として落とし込むのは簡単ではありませんでした。今では、「ブランドオフィシャル」がリリースされて形になったことで、みんなの解像度が上がり理解が深まりました。あとはやりきるだけだと思っています。

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@cosme TOKYOと@cosme Beauty Dayへの戦略投資について

菅原 「ブランドオフィシャル」の他にも大きな投資があります。それは、新たにチャレンジする店舗事業の投資です。JR原宿駅の目の前に、アイスタイルとしては初の大型路面店となる「@cosme TOKYO」を出店することを決定しました。これはアイスタイルが大きく成長するチャンスだと考えています。FY20の業績に与える影響はオープン1年目ということもあり、営業損失7.5億円を見込んでいます。とても大きな投資となりますが、業績だけでなく他のサービスとのシナジーも大きく、絶対にチャレンジするべき案件だと捉えています。

吉松 「@cosme TOKYO」は単なる小売事業ではなく、ブランドとユーザーとの接点をつくり、つながりを深めていく場所としても捉えています。また、2018年12月3日に初めて実施した24時間限定のECのスペシャルイベント「@cosme Beauty Day」を今年も実施します。「@cosme Beauty Day」もまた、ブランドとユーザーのつながりを作って深める場所です。こちらもまだ2年目ということもあり、プロモーション費用が先行するため、2.6億円ほどの損失を見込んでいます。

菅原 FY21では「@cosme TOKYO」や「@cosme BeautyDay」の損失解消を目指しており、同時に「ブランドオフィシャル」の導入拡大を見込んでいます。連結での黒字化は必達で、どれだけアップサイドが作れるかを考えていきたいと思います。

吉松 「ブランドオフィシャル」の成功のためにも、そしてアイスタイルの新たな成功モデルを作り上げるという意味でも、原宿の「@cosme TOKYO」は必ず成功させなければいけないと考えています。

菅原 「@cosme store」の1号店をオープンしたのが2007年ですが、「@cosme TOKYO」にはその時と同じようなワクワク感を抱いています。2020年に向けて大きく環境が変わる原宿というエリアで、1,300㎡という既存の「@cosme store」の5倍という売場面積を活かし、ラグジュアリーブランドからマスブランドまで幅広く取り揃える予定です。また、「@cosme」と連携を図ることで、アイスタイルにしかできないことをどんどんやっていきたいですね。もちろん、日本のお客さまだけでなく、世界に向けて日本の化粧品を広めていく場として、海外のお客さまにも利用していただけるような店づくりにしていきます。

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今までも、これからも。アイスタイルが大事にする「信頼」

吉松 この度、アイスタイルは創業20周年を迎えることができました。アイスタイルが20年続き、成長できたということは、ユーザーの皆様、クライアントの皆様をはじめとしたステークホルダーのおかげだと思っています。皆様からの信頼があるからこそ、ここまで成長できました。これからもユーザーやクライアントと真摯に向き合ってサービスを提供するとともに、引き続き皆様から信頼され、必要とされる会社でありたいと考えています。

菅原 アイスタイルは、ユーザーやクライアントの皆様に価値を提供できると考えれば、他の会社がやらないような手間がかかることでも地道に取り組んできました。それを続けることが他社に真似できないような強みとなり、成長してこれたのだと思います。また、「@cosme」のランキングは、ユーザーの皆様が投稿してくれたクチコミを基に当社独自のアルゴリズムで作っているものですが、創業以来公正に運営してきています。サイトの健全性は、皆様からの信頼を得る上で根底にあるものだと考えているので、こういったこともぶれないで続けていきたいです。

吉松 それらの強みと信頼を積み重ねて、ネットと店舗、ECを有機的につなげたアイスタイルならではのビジネスモデルができました。このビジネスモデルは世界にも通じるものだと思っています。まずは、「ブランドオフィシャル」の拡大に注力し、着実な収益基盤を構築してまいります。株主の皆様には、引き続きご支援をいただけますと幸いです。

吉松 徹郎

株式会社アイスタイル 代表取締役社長 兼 CEO

東京理科大学基礎工学部卒業後、アクセンチュア㈱入社。1999年7月に㈲アイスタイル(現:㈱アイスタイル)を設立し、代表取締役社長に就任。同年12月、コスメ・美容の総合サイト「@cosme」をオープン。2012年、東証一部上場。現在は「Beauty×ITで世界No.1」をミッションとして事業を拡大、アジアを中心にグローバルにビジネスを展開。

菅原 敬

株式会社アイスタイル 取締役 兼 CFO

シニアバイスプレジデント Global事業担当

グループ内で各種部門責任者や子会社代表取締役を務めた後、現在はCFOに加え、Global事業を統括する。当社に参画する前は、アクセンチュア㈱やアーサー・D・リトル(ジャパン)㈱において、10年間経営コンサルタントとして活躍。英国国立ブリストル大学にてMBA取得。

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